和歌山県和歌山市岩橋千塚古墳群

 岩橋千塚古墳群は和歌山市岩橋の紀ノ川河口南岸の丘陵地帯に広く分布する大古墳群で、総数700基以上に達します。いくつかの支群に分かれますが、このうち、丘陵北側に分布する前山A、B支群全域とC、大日山、大谷山支群の一部が国の特別史跡に指定され、現在紀伊風土記の丘として整備公開されています。公園内には見学コースが設けられ、保存状態の良い主要な横穴式石室が内部を見学できるようになっています。 【管理人特選】


岩橋千塚古墳群前山A支群(尾根上付近)

  


前山A7号墳

 A支群の中腹エリアの114号墳から遊歩道を登っていくと、道がカーブする内側に7号墳があります。小円墳ですが詳細は不明です。さらに登っていくと尾根上の休憩所へ出ます。ここから東の天王塚古墳へ向かう新しい遊歩道が現在建設中です。

 

前山A7号墳

尾根上の休憩所と天王塚へ向かう新しい遊歩道


前山A2号墳

 休憩所から尾根上の遊歩道を西へ向かうとすぐにピークがあり、その最頂部近くにあるA2号墳は六世紀末の径10mの円墳です。墳頂にアクリルの屋根が懸けられて、上部を失った横穴式石室が見学できます。玄室は長さ1m、幅2mの丁字形をしていて、玄門部には扉石がそのまま残っていました。石室の主軸は東西方向ですが、入口が南に曲がっていて、その部分は埋め戻されています。

前山A2号墳の石室保存施設

調査時の横穴式石室、入口が南に曲がっている

羨道と扉石

丁字形玄室、横から


前山A1、3〜6、新1号墳

 2号墳の周囲には3〜5号墳があります。5号墳は中央が陥没しています。また、南にある古墳がおそらく6号墳と思われます。ピークの東側には小円墳の1号墳、新1号墳があります。

 

前山A3号墳

前山A4号墳

前山A5号墳、中央が陥没

前山A6号墳?

前山A1号墳

前山A新1号墳


前山A8号墳

 古墳群の散策路を登り、尾根上に出ると、休憩所があります。そこから散策路とは反対側の東方向に林の中へ入っていくと、すぐ右のピークにあります。径15mほどの円墳で、竪穴式石室が2基ならんで露出しています。緑泥片岩の板石を小口積みしています。

A8号墳

竪穴式石室が2基並んで露出

竪穴式石室横から


前山A10号墳

 A8号墳から、南東方向に少し下ったところにあります。径15mほどの円墳で、横穴式石室が露出しています。上部は失われていますが、奧、側壁の石積みは良く残っています。

A10号墳

露出した横穴式石室

奧壁


前山A12、11、9号墳

 A8号墳から、尾根伝いに東へ進むと、順にA12、11号墳、少し離れて9号墳があります。11号墳は墳頂が陥没し、石材が一部見えています。

A12号墳

A11号墳

A9号墳


天王塚古墳

 A9号墳から、尾根上を東へ進み、鞍部を過ぎて、次のピークまで登ると水道タンクがあります。このタンクの奧に隣接していて、現状は竹薮に覆われています。岩橋山の最高地点に築かれた全長86m、後円部径44mの前方後円墳で、三段築成。岩橋千塚での最大規模です。主体部は横穴式石室ですが、現在は埋め戻されています。全長10m、玄室長4.2m、幅2.9m、高さ5.9m!羨道長4.8m、幅1.5m、高さ2.5mの両袖式で、玄室前道、前庭があります。玄室奥壁には石棚があり、上部には八本の石梁が構架されています。石棚は板石二枚を前後にずらせた特異な構造です。玄門と羨門にはそれぞれ閉塞用の板石があり、玄室奥壁に沿って、石棺か石屋形の板石材が散乱していました。岩橋式の横穴式石室としては最大級、玄室高さは、大野窟古墳に次いで国内二位の規模です。和歌山市立博物館に、羨道の途中から奧側の実物大模型が展示されています。

水道タンクの向こうにある

後円部

後円部南側の石室開口部。埋め戻されている

市立博物館の模型、羨道から玄室方向

市立博物館の模型、玄室奥壁、石棚、石梁

市立博物館の模型、奧から、玄室前道

市立博物館の模型、異常に高い玄室天井、石梁が八本架かっている

 2018年に発掘調査され、54年ぶりに石室が公開されました。床面には玉石が敷かれ、排水溝が石室外まで続いています。発掘調査時も雨水の排水に機能していたそうです。床面には八枚の板石が散乱していましたが、遺骸を置く施設だったと考えられています。

後円部の深い位置に開口

横穴式石室入口

羨道から玄門、扉石が手前に倒れている

玄室奥壁、石棚の下に置かれた石材は屍床用と思われる

玄室奥から玄門

玄室奥壁側の石棚、石梁

玄室天井、高い空間を8本の石梁で支えている

羨道から羨門


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