熊本県玉名市南部の装飾横穴墓群


原横穴墓群 【装飾古墳】

 玉名市富尾原、菅原神社の南200mの市道交差点から西側の丘陵南側崖面にあります。16基の横穴墓が一列に並んでいますが、民家の裏なので、見学はしにくいです。うち、3、7、10、12、13、15号墓に装飾があります。西端に近い3号墓は近年大きく崩落し、玄室が露出していますが、見学には危険な状況です。屍床がコの字に並び、奧屍床には石屋形が浮彫されています。また、奧には左右に各1個、左右屍床には前後に各2個ずつ、計10個もの石枕が作り付けられています。ここには5ヶ所に線刻画が残っていて、右側壁には顎髭をはやした人物像、左側壁には平行線、斜線を組み合わせたような複雑な不明紋様、石屋形右側の前壁に横方向の平行線を並べた盾のような紋様、石屋形屋根に何らかの紋様の痕跡、奥壁全体の上下二段に円紋、二重円紋などが描かれています。しかしながら、右側壁側の線刻画は崩落のために見られなくなってしまいました。是非とも復旧してほしいものです。

崩壊した3号墓

3号墓奧屍床の石屋形

左側壁の線刻紋様

 7号墓はほぼ中央にあり、飾り縁がかなり破壊されていますが、上部の残った部分に装飾があります。赤い彩色で鋸歯紋、円紋が描かれていますが、雰囲気的には飾り縁全体に描かれていたと思われます。この横穴墓群では唯一の彩色系の装飾です。玄室の奧、左右側壁にも線刻で円紋が描かれているのですが、入口に扉があるので確認できません。

7号墓

飾り縁上部の赤い彩色紋様

 9号墓は入口に飾り縁がなく、内部も奧屍床の加工が簡略化されています。

9号墓

玄室奧屍床の加工

 10号墓も小さな横穴墓で飾り縁がありませんが、玄室の3基の屍床の仕切に独特の加工がなされています。奧屍床の仕切は中央に排水用の溝を切り、両端が大きく競り上がったゴンドラ状に加工されています。左右屍床の仕切にも溝が切られ、ゴンドラ風にカーブしています。

10号墓

10号墓玄室、屍床の仕切が極端にカーブ

奧屍床の仕切の排水溝

 11号墓はアーチ形の飾り縁の内面に赤い彩色が残っています。内部は家形で屍床がコの字に並んでいます。

11号墓

11号墓玄室

 12、13号墓の2基は双子のように並んでいてどちらも装飾があります。12号墓は玄室が後世改造されて倉庫代わりに使われています。装飾は奧屍床の石屋形上部の庇に線刻で連続三角紋が描かれています。

左から12、13号墓

12号墓玄室、奧屍床以外は倉庫に改造されている

石屋形庇の連続三角紋

 13号墓には奧屍床の石屋形状施設の三ヶ所に線刻で紋様が描かれています。上部の庇前面には連続三角紋、左袖石前面には細長い連続三角紋が描かれています。奥壁には円紋4個と連続三角紋が密集して描かれています。

13号墓玄室

石屋形上部の連続三角紋

石屋形左袖石の連続三角紋

石屋形奥壁の円紋4個と連続三角紋

 14号墓をはさんで、15号墓は入口が土嚢で塞がれていますが内部を見ることはできます。奧屍床の上部庇に線刻で斜線が描かれていますが、意味は不明です。

14号墓

15号墓入口

15号墓玄室の奧屍床

15号墓奧屍床石屋形上部の線刻紋様、よくわからない


楢山(田崎)横穴墓群 【装飾古墳】

 玉名市田崎楢山、国道208号線田崎交差点の西、端の西側に標識があり、そこから橋の下に下りて、川沿いに北へ進んだところにあります。崖の高い位置に3基の横穴墓が開口していて、さらに右奧に4号墓があります。左端の1号墓の飾り縁に装飾があります。前面には白い円紋の周りを赤で囲ったような紋様が描かれていますが、下から見上げる状態では良くわかりません。庇の内面には赤い彩色で小さな円紋のようなものが多数描かれています。こちらは何とか確認できます。

崖の高い位置に左から1〜3号墓、右奧に4号墓

装飾のある1号墓

1号墓飾り縁内面の赤い彩色


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