熊本県山鹿市鹿央町岩原横穴墓群


岩原横穴墓群 【装飾古墳】

 

 山鹿市鹿央町岩原、岩原古墳群のある台地の北から西側にかけての斜面に広く分布する横穴墓群で、6支群約131基からなります。いくつかの横穴墓に装飾が見られます。県道16号線からすぐ南にある第1支群のみ整備されていますが、全体的に崖の高いところにあるので、見学はしやすくありません。向かいの崖には長岩横穴墓群が見えています。第I支群は48基の横穴墓があり、谷間の奥の方にある14号墓は単室構造ですが、複雑な構造を削り出し、屍床がコの字に並んでいます。奧屍床と左屍床の仕切に円錐形の突起があり、その前面などに赤色顔料が残っています。

14号墓

奧屍床

奧屍床と左屍床の仕切に円錐形の突起がある

奧屍床仕切の突起に赤色顔料が残る

 14号墓の隣りにある15号墓はほぼ同じ設計なのですが、掘削する途中で、14号墓と通じてしまったため、急遽反対側へ寄せて造られ、かなりいびつな構造になってしまっています。装飾は奥壁に三個、奧屍仕切の前面に五個の連続三角紋が線刻で描かれて、赤色顔料で塗り分けられています。

15号墓

奧屍床、むかって右側に寄っている

奧屍床仕切前面の連続三角紋と赤色顔料

奧壁連続三角紋

 18〜25号墓あたりは崖面に横穴が密集していて、比較的見学しやすいエリアです。いずれも同じ構造で、屍床がコの字に並び、奥屍床の仕切はゴンドラ状に両端が反り上がっています。

19号墓

19号墓内部

20号墓

20号墓内部

21号墓

21号墓内部

 23号墓は左側の羨道部に小横穴墓(24号墓)が附属している特異な横穴墓です。玄室の前壁の左上と右上に線刻が少し残っていますが、紋様は不明です。

15号墓

玄室の前壁、左右上方に線刻がある

前壁左上の線刻

前壁右上の線刻

 26〜34号墓は一つのまとまりとなっています。その中で31号墓と32号墓が規模が大きく、間の外壁に靭の浮彫が残っています。浮彫背後の彫り込みが32号墓に繋がっているので、32号墓に附属するものとされています。靭本体の上部には11本の鏃が、下部には足が表現されています。また、32号墓玄室には赤色顔料も何カ所か残っています。このグループは崖の上にあるので、見学はかなり危険です。

左が31号墓、右が32号墓

間の外壁にある靭の浮彫

靭の浮彫拡大

 V支群は岩原台地の西の崖に分布し、小さな谷間毎にさらに7グループに分かれます。群中、唯一の複室構造であるV-6-6号墓は前室に2、後室に3基の屍床があり、内部の全面が赤く塗られています。前室の奥壁に装飾があり、玄門を挟んで向かって右上に靭1、円紋2、左上に靭1、円紋2が刻まれていますが、残念ながら、剥落がひどく、保存状態は良くありません。なお、現地は未整備なので、案内がないと行き着くのは困難です。

V-6-6号墓

後室奥壁前の屍床

前室奥壁向かって右上の線刻

右上の線刻拡大、靭の一部

前室奥壁向かって左上の線刻

左上の線刻拡大、靭の一部(左)と円紋


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